昨日までに3つの話をしました。
第1回 「教育の板橋」の本当のところ
第2回 板橋区教育委員会が目指すもの
今日も板橋区の教育施策にまつわる質問に答えていきます。
志村小の改築問題が志村四中との一体型小中一貫校建設にすり替わっていませんか?
板橋区教育委員会の中に、早くから小中一貫校を作ろうという前提があったと推測されます。志村小は前回の改築からかなり時間が経っていて改築する必要があるのですが、仮校舎の設置場所や工事車両の動線確保が難しいとされ、工事期間が6年かかるなどの理由によってこの計画が浮上しました。
板橋区教育委員会の提案に対して、協議会メンバーからは
2校(志村小と志村四中)を小中一貫校にすることにコンセンサスは得られたのか
志村小を残したい。現志村小に仮設校舎を建設できないのか
小中一貫校にすると低学年の通学距離が心配
学校の敷地面積は十分なのか
志村四中との合意形成はどうするのか
工期を短くできないのか
というように、最初は志村小を残すことを大事にした議論がありました。協議会のメンバーだけでなく、もっと、広く意見を求めるべきだとか、協議会メンバーを増やすべきだとか、幼稚園・保育園からアンケートを取ろうとか、もっと説明をしっかりしようという意見も出ていました。
アンケートには
現志村小の場所での改築
現志村小とは他の場所に仮校舎を建設する
志村四中との施設一体型にする
という三つの選択肢があったのですが、いつの間にか志村四中の関係者も協議会に入り、会の名称も「志村小・志村四中」と改称され変わり始めます。
現志村小での改築は、子どもたちの安全確保の問題とか工事の長期化が壁となるため難しく、また、仮校舎の候補地を確保できなかったとして、板橋区教育委員会は一貫校をつくることが良策と言い出しました。
志村四中関係者からは
小学生を迎え入れることは可能
志村四中の校庭に仮設校舎を建てれば、志村小の学習効果は高まる
小学生と中学生の交流ができて良い
など一貫校について前向きな意見が出て、小中一貫校が良いもので建設が可能であるという認識が高まったのです。
保護者を対象に
小中一貫教育についてご存じですか?
小中一貫校ができたら、通いたいですか?
小中一貫校に期待することは何ですか
と小中一貫校が決まったかのようなアンケートが行われ、期待が7割になるという結果も出ました。それでも協議委員の中には
志村小が小中一貫型の学校になることに反対の意見はなかったのか
小中一貫型の学校の定義が分からない
志村小と、志村四中に入学してくるほかの小学校との間に、差が生じないか
という疑問も出ており、こういう質問に丁寧に答えていく必要があったと思います。
残念ながら、そういう疑問が出たにも関わらず、しっかりした議論ができないまま「現在地での改築が一番良いが、会議を重ねた結果、この方向性を選択したことについて配慮してほしい」と意見書に盛り込まれ、協議会は「小中一貫校の建設」を飲み込んだ形になりました。
小学校1年生から9年生までの差異に配慮できるのか
他区の小中一貫校で課題となった人間関係やいじめに対して検討が必要なのでは
校庭の面積は十分なのか
校庭の面積を確保するには、校舎を高くするしかないが、その場合の子どもたちの生活はどうなるのか
など、まだまだ検討する課題がいっぱいあります。小中一貫校という枠を作ってしまって、こういう課題は後から検討するということに非常に疑問を感じます。課題を検討せずに、小中一貫校の選択を決定すべきではないと考えています。
やはり急ぎすぎではないかと思い、東京都教職員組合板橋支部も区議会事務局に陳情書を出しましたが、すでに協議会では小中一貫校建設についての意見書が作成され、教育長に提出されているとして却下されました。今後は区議会や教育委員会での議論を経て決まっていくようですが、とてつもなく大きな問題を抱えていることは事実です。もっともっと広く意見を求め、小中一貫校について見直しを含めた議論をしたいのです。

高野 毅 先生のプロフィール
定年退職後も引き続き非常勤講師として板橋区の小学校で教える。教師の働き方改革や教員の職場での仲間づくりもライフワークで、教職員組合運動を大切にし、そこでも活躍をしている。「志村小がなくなる?小中一貫校問題を考える会」のメンバー。
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